体験設計とは?滋賀の小さな会社がデザインの前に決めること
「チラシを作ったのに、思ったほど人が来なかった」「ホームページを新しくしたのに、問い合わせが変わらない」。滋賀の小さな会社やお店で、デザインを新しくしたのに結果が変わらない、という声をよく聞きます。足りていないのは、デザインの前に決めておくことかもしれません。それを決めるのが「体験設計」です。むずかしそうな言葉ですが、やることはシンプルです。この記事では、体験設計とは何か、小さな会社やお店が自分でできる進め方、会議で決めることを1枚にまとめる方法を、順に説明します。
体験設計(UXデザイン)とは、「見た目の前に決めること」
体験設計は、英語ではUXデザインと呼ばれます。UXは「ユーザー・エクスペリエンス」の略で、お客さんが体験すること全体を指します。
わかりやすく言うと、体験設計とは、誰が・どこで・どう感じて・何をするかを、見た目を作る前に決めておくことです。
たとえばチラシなら、こう考えます。
- 誰が見るのか。近所に住む子育て中の人か、通勤で前を通る人か
- どこで見るのか。ポストの中か、お店のレジ横か、駅の掲示板か
- 見たとき、どう感じてほしいのか。「行ってみたい」か「安心できそう」か
- そのあと、何をしてほしいのか。電話か、来店か、ホームページを見ることか
これが決まっていれば、文字の大きさも、写真の選び方も、載せる量も、自然に決まります。反対に、これが決まっていないと、どれだけきれいに作っても「誰にも刺さらない」ものになりがちです。
デザインの前に決める3つ
体験設計でまず決めるのは、次の3つです。これだけでも、デザインの迷いはずいぶん減ります。
誰が
いちばん来てほしいお客さんを、1人に絞って思い浮かべます。年齢や住んでいる場所、何に困っているか。「みんな」にしないことが大事です。
どこで
そのお客さんが、どこでお店や会社を知るか。スマホの検索、地図、知り合いの紹介、店の前を通ったとき。場所によって、見せ方が変わります。
どう感じて、何をするか
見たときに感じてほしいこと、そのあとにしてほしいこと。「安心して電話する」「気になって寄ってみる」のように、気持ちと行動をセットで決めます。
「誰が」を1人に絞る理由
「お客さんは、老若男女みんなです」と言いたくなる気持ちは分かります。でも、みんなに向けた言葉は、誰の心にも残りにくいです。
1人に絞っても、ほかの人が来なくなるわけではありません。むしろ、具体的な1人に向けて作ったもののほうが、近い悩みを持つ人にも届きやすくなります。
「どこで」は、見る時間の長さを決める
ポストに入ったチラシは、ゴミ箱に入るまでの数秒で判断されます。駅の掲示板は、歩きながら目に入る一瞬です。ホームページは、スマホで指を動かしながら読まれます。
見る時間が短い場所ほど、伝えることを絞らなければいけません。だから「どこで」を先に決めます。

お客さんの行動を、順に書き出す
3つが決まったら、次はお客さんの行動を順番に書き出します。お客さんが「知る」ところから「また来る」ところまでを、1歩ずつ並べるだけです。
たとえば、町の整体院なら、こんな流れになります。
- 困る肩こりがひどい。どこか行きたい
- 探すスマホで「草津 整体」と調べる
- 比べる料金・場所・雰囲気を見る
- 連絡する予約の電話かLINEを送る
- 来るはじめて店の前に立つ
- また来る次の予約を入れる
図1 お客さんの行動の流れ(町の整体院の例)
それぞれの段で「何が要るか」を書く
流れを書いたら、それぞれの段で、お客さんが何を知りたいか、何に困るかを書き足します。
- 探す:検索や地図で、名前と場所がすぐ出てくるか
- 比べる:料金がのっているか。どんな人がやっているか分かるか
- 連絡する:電話番号がすぐ押せるか。LINEで聞けるか
- 来る:入口が分かるか。駐車場がどこか分かるか
- また来る:次の予約の取り方が分かるか。手元に何か残るか
こうして書き出すと、「本当に要るもの」が見えてきます。チラシを作るつもりだったのに、いちばん困っているのは「入口が分かりにくい」ことだった。それなら先に要るのは、チラシではなく看板かもしれません。
書き出しは、スタッフと一緒に
お客さんと話しているのは、店主だけではありません。受付の人、電話を取る人、配達する人。それぞれが「よく聞かれること」「よく迷われること」を知っています。
流れを書き出すときは、何人かで付箋を出し合うのもいい方法です。お客さんのつまずきは、現場の人がいちばんよく知っています。
体験は、お店の外でも続いている
流れを書いてみると、お客さんの体験は、お店の中だけで起きているわけではないと気づきます。家でスマホを見ているとき。車で前を通ったとき。帰ってから、もらった名刺やカードを見返したとき。
そのどこかで「分かりにくい」「不安だ」と感じると、次の段に進んでもらえません。チラシ、ホームページ、看板、名刺は、それぞれ別のものに見えます。でもお客さんから見ると、1本の流れの中の、別々の場所にすぎません。
だから体験設計では、作るものを1つずつ考える前に、流れ全体を先に見ます。そのうえで「いちばんつまずいている段」から手をつけます。全部を一度に作り直さなくても、つまずきを1つ減らすだけで、流れは変わります。
見た目から決めた場合と、体験から決めた場合
同じチラシやホームページでも、どこから決めるかで、できあがるものが変わります。
見た目から決めた場合
- 「おしゃれな感じ」「明るい感じ」から話が始まる
- 載せたいことを全部載せて、字が小さくなる
- 誰に向けたものか、作った人も説明できない
- できたあとで「なんか違う」と直しが続く
- チラシ・ホームページ・看板で、言っていることがばらばら
体験から決めた場合
- 「誰が・どこで・どう感じるか」から話が始まる
- その人に要ることだけを載せるので、字が大きくなる
- なぜこの形なのかを、言葉で説明できる
- 直すときも「その人に届くか」で判断できる
- 紙もWebも、同じ言い方と色でそろう
図2 見た目から決めた場合と、体験から決めた場合のちがい
見た目を大事にしなくていい、ということではありません。見た目は、体験を決めたあとで、それを届けるために選ぶものです。順番が逆になると、どれだけきれいでも迷いが残ります。
小さな会社ほど、そろえる効き目が大きい
大きな会社は、広告にお金をかけて、何度も名前を見せることができます。小さな会社やお店は、そうはいきません。チラシ1枚、看板1つ、ホームページ1つで、覚えてもらう必要があります。滋賀のように車で動く人が多い地域では、道沿いの看板と、スマホで開いたホームページと、ポストに入ったチラシを、同じ人が別の日に目にすることもよくあります。
だからこそ、それぞれがばらばらのことを言っていると、もったいないのです。チラシでは「やさしい」、ホームページでは「本格派」、看板では「安さ」。これでは、お客さんの中で1つの印象になりません。
体験設計で「どう感じてほしいか」を1つ決めておけば、紙もWebも、同じ方向を向きます。数が少ないぶん、1つひとつが同じことを言っていると、覚えてもらいやすくなります。
あとから直すときの「ものさし」になる
体験から決めておくと、できあがったあとにも役に立ちます。直したいところが出てきたとき、「その人に届くか」「次の行動につながるか」で判断できるからです。
好みの話で迷ったら、最初に決めた1人のお客さんに戻ります。それが、話し合いを短くするいちばんの近道です。
会議で決めることを1枚にする
体験設計を社内で進めると、会議が増えがちです。話し合っているうちに、何を決めたのか分からなくなる。次の会議で、また同じ話をする。小さな会社でも、よくあることです。
そこでおすすめしたいのが、決めることを1枚の紙にまとめておく方法です。
1枚にまとめておくこと
- いちばん来てほしいお客さん(1人)
- そのお客さんが、どこでお店や会社を知るか
- 見たときに、どう感じてほしいか(ひとこと)
- そのあと、何をしてほしいか(電話・来店・予約 など)
- お客さんの行動の流れと、いちばんつまずいている段
- 今回作るもの(チラシ・ホームページ・看板 など)と、作らないもの
- いつまでに、誰が決めるか
「作らないもの」も書いておく
意外と大事なのが「今回は作らないもの」です。あれもこれもと広げると、予算も時間も足りなくなります。
「今回はチラシだけ。ホームページは来年」と1枚に書いておけば、会議のたびに話が広がるのを防げます。
「誰が決めるか」を決めておく
みんなで意見を出すのはいいことです。でも、最後に決める人が決まっていないと、意見はまとまりません。デザインの直しが止まらない原因の多くは、ここにあります。
意見は全員から。決めるのは1人。これを最初に決めておくと、会議は短くなります。会議の1枚の作り方は「会議で決めることを1枚にまとめる」でもくわしく書いています。

滋賀で体験設計を頼むなら:それナル?(木下スタジオ)の進め方
それナル?は、滋賀の木下スタジオ(木下貴博)が運営する、小さく頼める入口です。大津・草津・彦根など滋賀県内を中心に、京都・大阪・名古屋や全国からのオンラインのご相談も受けています。作るものが決まっていない段階からの相談のために、窓口が2つあります。
| 窓口 | こんなときに |
|---|---|
| 体験設計の窓口 | 何を作ればいいか分からない。お客さんの流れを一緒に書き出したい。チラシ・ホームページ・看板のどれが先かを決めたい |
| 会議の窓口 | 社内の会議がまとまらない。決めることを1枚にしたい。会議の進め方から整えたい |
体験設計の窓口(/consul.html)
「何から手をつければいいか分からない」というときの入口です。上で書いた「誰が・どこで・どう感じるか」と、お客さんの行動の流れを、一緒に書き出します。
そのうえで、いま作るべきものと、作らなくていいものを分けます。要らないものは要らないとお伝えします。
会議の窓口(/meeting.html)
社内で話がまとまらない、決めたことが次の会議で消えてしまう、というときの入口です。会議で決めることを1枚にまとめ、進め方を整えるところから手伝います。
決めたあとは、そのまま作れる
それナル?では、チラシ・ポスター・看板・名刺といった紙のものから、ホームページ、社内資料までまとめて頼めます。体験設計で決めたことを、同じ人がそのままデザインにします。進め方で決めていることは3つです。
- 窓口は1人:聞き取りから納品まで同じ人が受けます。決めたことが途中で伝わらなくなる心配がありません
- 値段を先に出す:何をどこまでやるか、含まれないものまで、見積りの時点でお伝えします。見積りは無料です
- 作ったデータは渡す:書き出したお客さんの流れや1枚の紙も含めて、手元に残る形でお渡しします
木下スタジオは、本店ではアートディレクター(見た目と伝え方の全体をまとめる役)として大きな仕事をしています。それナル?は、その考え方を「小さく・早く」頼める入口です。

相談は、LINE・フォーム・電話のどれからでも始められます。返事は24時間以内です(土日祝は翌営業日)。打ち合わせは基本オンラインで、必要なときだけ伺います。毎月3社まで、1件ずつ手を入れて受けています。
はじめて頼むときの準備や流れは「はじめてデザインを頼む人へ」に、ホームページで問い合わせまでの流れを整える話は「問い合わせが来るホームページは、見た目より“道筋”で決まる」に書いています。
体験設計(UXデザイン)とは、わかりやすく言うと何ですか?
見た目を作る前に、「誰が・どこで・どう感じて・何をするか」を決めることです。これが決まると、文字の大きさや写真の選び方、載せる量が自然に決まります。
小さな会社やお店にも、体験設計は必要ですか?
はい。お客さんの数が少ないほど、1人ひとりの動きが見えやすく、決めやすいことが多いです。お客さんの行動を順に書き出すだけでも、本当に要るものが見えてきます。
自分たちで体験設計を始めるには、何からすればいいですか?
まず、いちばん来てほしいお客さんを1人に絞ります。次に、その人がどこでお店を知り、何をして連絡するかを順に書き出します。それを1枚の紙にまとめると、会議で迷いにくくなります。


