引き継ぎ書の作り方|辞める前に残す1枚(滋賀)
滋賀の小さな会社で担当者が辞めることになり、「引き継ぎ書を作ってと言われたけれど、何を書けばいいのか分からない」「前の人の引き継ぎ書があるのに、肝心なことが書いていなかった」と困っていませんか。引き継ぎ書の作り方で大切なのは、手順を細かく書くことより先に、仕事の全体を1枚の地図にして残すことです。この記事では、引き継ぎがうまくいかない理由、1枚目に置く地図、書くこと、辞める前の段取り、受け取る人が探せる形まで順にお話しします。最後に、それナル?で引き継ぎ書を整えるときの進め方もまとめています。
引き継ぎがうまくいかないのは、「手順」しか残らないから
引き継ぎ書を頼まれると、多くの人は、自分がやっている作業の手順を書き出し始めます。毎月の請求書の出し方、発注の仕方、システムの使い方。どれも大切です。でも、手順だけが何十ページも並んだ引き継ぎ書は、受け取った人にとって意外と使いにくいものです。
なぜかというと、受け取った人が本当に困るのは、手順が分からないときより、「これは何のためにやっているのか」「どこまでが自分の仕事なのか」「途中になっているものはどれか」が分からないときだからです。手順は、やってみれば少しずつ分かります。でも、仕事の全体や判断の理由は、前の人の頭の中にしかありません。
困る引き継ぎ書
- 作業の手順だけが並んでいる
- 仕事の全体が見えない
- 途中になっているものが分からない
- 社外の人の名前と連絡先がない
- 「なぜそうしているか」が書いていない
助かる引き継ぎ書
- 1枚目に仕事の全体の地図がある
- 毎日・毎月・毎年の仕事が分かれている
- 途中のものに印がついている
- 誰に聞けばいいかが書いてある
- 判断の理由が一言ずつ残っている
図1 困る引き継ぎ書と、助かる引き継ぎ書
小さな会社ほど、1人が持つ仕事が広い
人数が少ない会社では、1人の担当者が経理も発注も取引先とのやりとりも受け持っている、ということがよくあります。担当の範囲が広いほど、その人が辞めたときに抜ける穴も大きくなります。しかも、その仕事の全部を知っている人は、本人以外にいないことが多いのです。
だからこそ、引き継ぎ書は「手順の束」ではなく、その人が持っていた仕事の全体を、外から見える形にしたものであるべきです。
引き継ぎ書は1枚目に「全体の地図」
それナル?では、引き継ぎ書の1枚目に、仕事の全体を1枚にまとめた「地図」を置くことをすすめています。細かい手順は2枚目以降に回し、1枚目だけ見れば、どんな仕事がどのくらいの間隔であるかが分かるようにします。
毎日・毎週の仕事
メールの確認、受け付け、日報など、くり返しの仕事
毎月・毎年の仕事
締め日、請求、更新、季節の行事など、忘れやすい仕事
途中の仕事
いま動いている案件。どこまで進んでいて、次に何をするか
関わる人
社内で聞く人、社外の取引先。名前と連絡先と、何の窓口か
図2 引き継ぎ書の1枚目に置く4つの欄
毎月・毎年の仕事がいちばん抜けやすい
4つの欄のうち、特に気をつけたいのが「毎月・毎年の仕事」です。毎日の仕事は、引き継ぐ期間のうちに一緒にやれば覚えられます。でも、年に1回の更新や、季節ごとの手続きは、引き継ぎの期間中に一度もやってこないことがあります。そして、担当が替わって半年後に「あれ、これ誰がやるんだっけ」となるのです。
1枚目の地図には、1年を12か月に分けた小さな表を入れ、どの月に何があるかを書き込んでおくと安心です。
| 時期 | 仕事 | 手順書 | 聞く人 |
|---|---|---|---|
| 毎月末 | 請求書を出す | 手順書3 | 経理の担当 |
| 年に1回 | ホームページのドメインの更新 | 手順書7 | 契約している会社 |
| 季節ごと | 店頭のチラシの入れ替え | 手順書5 | 販売の担当 |
| 年に1回 | 取引先へのあいさつ状 | 手順書8 | 社長 |
引き継ぎ書に書くこと:仕事・人・途中のもの・判断の理由
1枚目の地図ができたら、2枚目以降に中身を書いていきます。ここでも、何もかも書こうとしないことが大切です。受け取る人が迷いそうなところから先に書きます。
途中の仕事は「次の一手」まで書く
いま動いている案件は、受け取る人がいちばん困るところです。「〇〇社の見積りの件」だけでは、どこまで進んでいるのか分かりません。いまどこまで進んでいるか、次に何をするか、いつまでにするか、誰に連絡するかまで書いておきます。次の一手が書いてあれば、受け取った人はその日から動けます。
判断の理由を一言残す
手順の横に、「なぜこうしているか」を一言書いておきます。「この取引先には、メールではなく電話で先に一言入れる(以前メールが届かなかったことがあるため)」のように。理由が分かれば、受け取った人は状況が変わったときに、自分で判断を変えられます。理由が分からないと、意味が分からないまま続けるか、知らずにやめてしまうかのどちらかになります。
関わる人は「何の窓口か」と一緒に
社外の取引先や、社内で頼っている人は、名前と連絡先だけでなく、「何のときに連絡する人か」を書いておきます。新しい担当者があいさつに行くときも、話のきっかけになります。
引き継ぎ書に入れるもの
- 1枚目:仕事の全体の地図(毎日・毎月・毎年・途中・関わる人)
- 1年の仕事の表(どの月に何があるか)
- 途中の仕事:進み具合・次の一手・期限・連絡先
- 作業ごとの手順書(1つの作業に1枚)
- 判断の理由(手順の横に一言)
- 契約・アカウント:どのメールで登録しているか・更新月
- データの置き場所(共有フォルダのどこに何があるか)
- 最後のページ:作った日と、作った人の連絡の取り方(取れる場合)
図3 引き継ぎ書のチェックリスト

辞める前の引き継ぎの段取り:いつから・誰と
引き継ぎ書は、辞める直前の数日で慌てて作るものではありません。最後の週は、あいさつや片付けで思った以上に時間がなくなります。引き継ぎは、辞めることが決まったらすぐに段取りを決めておくのが理想です。
- 地図を作る1枚目に仕事の全体
- 受け取る人を決める仕事ごとに1人
- 一緒にやる見ている前で作業する
- 交代する受け取る人がやって見てもらう
- 確かめる地図の全部に受け取る人がいるか
図4 辞める前の引き継ぎの流れ
仕事ごとに受け取る人を決める
1人の担当者が持っていた仕事を、1人で全部受け取れるとは限りません。1枚目の地図を見ながら、仕事ごとに受け取る人を決めます。地図の仕事のどれかに、受け取る人の名前が入っていなければ、そこが抜けている場所です。決めるのは社長や上の人の役目です。この話し合いには、会議の1枚の形がそのまま使えます。
「一緒にやる」と「交代する」を分ける
引き継ぎの期間には、まず前の人がやるのを見てもらい、次に受け取る人がやるのを前の人が見る、という2段階を作ります。書いてあることと、実際にやってみたときの差は、交代したときに初めて見つかります。見つかった差は、その場で引き継ぎ書に書き足します。
引き継ぎ書のデザイン:受け取る人が探せる形
引き継ぎ書は、受け取った人がこれから何年も開くかもしれない資料です。デザインで大切なのは、きれいに見せることより、困ったときに探せることです。
1つの作業に1枚、番号をつける
手順書は、1つの作業に1枚と決め、番号をつけます。1枚目の地図や1年の表からは「手順書3」のように番号で案内します。こうしておくと、手順が変わったときもその1枚だけを直せば済みます。
画面の写真には印をつける
システムやソフトの使い方は、画面の写真を貼ると分かりやすくなります。ただ、写真を貼るだけでは、どこを押せばいいかが分かりません。押すところに丸や矢印をつけ、写真の横に「ここを押す」と一言書きます。
画面の写真は、ソフトが新しくなると見た目が変わります。写真の下に撮った日を小さく書いておくと、受け取った人が「画面が違うのは古いからだ」と気づけます。写真に頼りすぎず、押すボタンの名前を文字でも書いておくと、見た目が変わっても迷いにくくなります。
文字の大きさと色の決まりをそろえる
引き継ぎ書は、何人もの人が少しずつ書き足していくうちに、文字の大きさや色がばらばらになりがちです。見出し・本文・注意書きの3つだけ、大きさと色を決めておきます。特に「注意」の色は1つに決めて、ほかでは使わないようにします。注意の色が1か所にしかなければ、受け取った人はそこを見落としません。
社内で直せる形で渡す
引き継ぎ書は、受け取った人が書き足していくものです。社内の誰でも開けるソフトで作り、共有の場所に1つだけ置きます。社内の書類の型の考え方は、社内の書類の型を作るでもくわしく書いています。

滋賀の小さな会社でよくある引き継ぎ
滋賀の会社の相談を受けていると、大津でも近江八幡でも東近江でも、引き継ぎの悩みにはいくつかの形があると感じます。場面ごとに、気をつけたいところをまとめておきます。
| 場面 | 気をつけたいところ |
|---|---|
| 長く勤めた人が辞める | 本人も意識していない仕事が多い。1年の表で抜けを探す |
| 家族の中で仕事を渡す | 口で伝わっている前提になりやすい。判断の理由を紙に残す |
| パート・アルバイトの入れ替わり | 手順書を1枚ずつにしておくと、次の人の受け入れにも使える |
| 担当の異動 | 前の人に聞ける間に、途中の仕事の「次の一手」を書いてもらう |
引き継ぎ書は、辞める人のためだけの資料ではありません。次に新しい人が入ったときの手引きの材料にもなります。新しい人の受け入れについては、新人の手引きを1冊にでも書いています。
滋賀で引き継ぎ書を頼むなら:それナル?(木下スタジオ)の進め方
それナル?は、木下スタジオ(滋賀・木下貴博)の小さい入口です。チラシやホームページだけでなく、引き継ぎ書のような社内の資料も相談を受けています。担当の方に話をうかがいながら、1枚目の地図と1年の表を作り、手順書を番号つきの型に整えてお渡しします。
| 社内資料のデザイン | 1時間5,000円・延長30分2,500円 |
|---|---|
| 型(テンプレート)を作る | 29,800円〜(手順書の型など、次からは社内で使い回せます) |
| 聞き取りから頼む場合 | 内容をうかがってお見積り(無料) |
| 急ぐとき | 当日・翌日は+50% |
辞める日が近く、急ぎたい場合もまずはご相談ください。急ぎの料金も先にお伝えします。中身は担当の方がいちばんよく知っているので、それナル?は聞き取りと整理、見やすい形にするところを受け持ちます。
窓口は1人で、聞き取りから納品まで同じ人が担当します。値段は先に全部出し、上がるときはその理由も先にお伝えします。作った引き継ぎ書と型のデータはお渡しします。打ち合わせは基本オンラインで、必要なときは伺います。くわしくは社内資料の窓口に、引き継ぎの段取りを決める話し合いから手伝ってほしいときは会議の窓口に、料金の一覧は料金ページにまとめています。
引き継ぎ書は、いつから作り始めればいいですか?
辞めることや異動が決まったら、すぐに1枚目の地図から作り始めるのがおすすめです。最後の週はあいさつや片付けで時間がなくなりがちです。受け取る人が実際にやってみる期間をいちばん長く取れるように、地図は早めに作っておきます。
手順を全部書く時間がありません。何から書けばいいですか?
1枚目の地図と、途中の仕事の「次の一手」から書いてください。毎日の作業は一緒にやれば覚えられますが、途中の仕事と年に1回の仕事は、書いておかないと抜けやすいからです。
前の人がもう辞めてしまいました。今からでも作れますか?
作れます。残っている資料やメール、1年分の予定などから、仕事の地図を作り直すところから始めます。分からないところは「分からない」と印をつけておくと、次に同じことが起きたときに役立ちます。
引き継ぎ書は、WordとExcelのどちらで作ればいいですか?
社内の誰でも開けて、直せるものなら、どちらでも構いません。大切なのは、共有の場所に1つだけ置くことです。それナル?では、ふだん社内で使っているソフトに合わせて型を作ります。


